シンギング・ドッグについて
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◆ ノンPCサウンド・プロセシング ◆◆
いつも同じことをいっていますが、ものごとというのはなんでも調べてみるものです。シンギング・ドッグの生みの親であるカール・ワイスマンは、犬の鳴き声を目の敵にしていたのだそうです。なぜならば、彼はコペンハーゲンのラジオ局のために、鳥の啼き声を録音をしていたので、その日常業務の最大の障碍が、鳥の啼き声を邪魔する犬の鳴き声だったからです。これはもう、典型的な犬猿の仲です。
したがって、フィールドで録音した「ワイルド・トラック」から、不要な犬の声を除去する作業が、ワイスマンのポスト・プロダクション・ワークの中心となったわけですね。お年を召した方なら、専門家でなくても、リール・トゥ・リール・テープ・マシンでの編集作業というのが、いかに面倒かをご存知でしょう。
映画フィルムの「ムヴィオラ」編集機のような、録音テープ編集専用のカッティング・デスクというものがあるそうで、ワイスマンのようなエンジニアは、当然、そうした道具で作業を効率化していたのでしょうが、それにしても、PCやサンプラーでちょいちょいとやるようなわけにはいきません。
疲れるので、これ以上、技術的細部には立ち入りませんが、そのようにして、ラジオ放送用の鳥の啼き声を集めたテープがつくられたわけです。そして、放送には使わなかったゴミのテープ、すなわち、犬の鳴き声のテープが山ほど残りました。
ワイスマンはこれを捨てるつもりでしたが、そのとき、このテープのピッチを整え、Jingle Bellsをつくれば、子ども番組にもってこいのものができるだろう、というアイディアを得たのだそうです。かくしてシンギング・ドッグのJingle Bellsが誕生し、45回転盤や78回転盤やEPとして、いくつかの国でリリースされるにいたったのでした。
このJingle Bellsがクリスマス・クラシックになったのは、調べてみると、意外にも1970年代のことなのだそうです。そういわれてみると、よくFENを聴いていたわりには、60年代にこのヴァージョンを聴いた記憶はなく、70年代に、夕方の番組Kantoh Sceneなどでかかっていたという記憶があります。これはNYのあるラジオ局のDJが、1970年に、ヘヴィー・ローテーションでこの曲を流したおかげなのだとか。かくして、誕生から15年もたって、シンギング・ドッグはホリデイ・シーズンの常連スターとなったのでした。
(上記紹介記事は「Songs for 4 Seasons 」より転記掲載させていただきました。)
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